従来工法の課題を見直す中で、加飾ニーズはプラスチックにとどまらず、金属やガラスへと広がりつつあった。
VSSは水蒸気と圧空による転写プロセスにより、素材と熱に依存しない加飾技術として進化。
新たな市場への適用可能性を切り拓いた。
後加飾への新たな課題

従来の成形品への加飾工法の1例として、ヒーターを用いてフィルムを加熱軟化させ、凹凸ある製品へ3次元にフィルムを被覆する方法が挙げられる。
使用できるフィルムは蒸着、シルク印刷、グラビア印刷、樹脂ラミネート等、多種多様であったが、伸び性にある程度限界があり、被覆後のフィルムの端面処理方法も課題であった。
また、シートを均一に加熱するのが難しく、特定の色が燃えてしまう等の問題があった。
成形品に加飾する方法は塗装が一般的だが、プラスチックだけでなく、金属やガラスへの加飾ニーズもでてきており、後加飾工法の需要の潜在性を感じた。
伸びる箔との出会いとその可能性
後加飾を研究するために市販の転写装置を導入したが、一部の家電製品のごく少量オプション部品の生産をするに留まった。その後、別の転写装置への入れ替えをしたが、課題解決には至らず、数年間塩漬けとなっていた。
そんな中、常温でも400%伸びる箔を開発したメーカーと出会った。原反が特殊で、常温真空でも製品形状に原反が追従し、水蒸気加熱と空圧で絵柄を転写する専用箔。転写後はインモールド成形と同様に、原反を剥がすことで絵柄のみが転写され、フィルムの端面処理が不要という夢のような原反であったが、従来の手持ちの転写装置では、原反が溶けてしまい、上手く使いこなせなかった。この原反を使いこなすためには、新たに転写装置の開発をするしかなかった。
原理原則に基づいた装置の開発
基礎研究を経て、原反への事前の加熱無しで水蒸気と圧空で転写させられるようになった。そんな折、スマートフォンのガラス代替プラスチックへの裏面転写のニーズがあり、実機の設計製作に着手。これまでに培った技術を結集させ、現装置を形にすることができた。並行して、量産を視野に入れた転写箔の送り装置も開発・製作し、ようやく成形品に後加飾したサンプルを作れるようになった。

海外のニーズに上手くマッチ

国内メーカーがスマートフォンから撤退し、マーケットの主役が海外メーカーに移り変わりつつある時期に、海外のスマートフォンメーカーへ部品を供給しているメーカーに興味を持っていただいた。
その結果、複数の海外企業と技術供与契約を締結。現地で装置を立ち上げるべく何度も出張し、問題点を洗い出し、解決して稼動できるようにした。
今後の課題と展望
国内需要の再発掘、少量多品種対応への方法論構築。装置の精鋭化とそれを支える治工具の設計製法のレベルアップと人材の育成、海外受注製品の生産の安定性と適用素材の拡大。
開発を通して感じた事
前例がなく、水蒸気の状態を制御する転写工程は極めて高速かつ不可視であるため、水蒸気の状態を安定的に制御する理論は、装置が完成し実証できるまで、社内も含め、納得させられるだけの説得力は無い。前職までの経験から理論的に理解できていても結果を出すまでは苦しい毎日であったが、吉田テクノワークスには「難しい事だからこそチャレンジする」社風があり、社内の開発承認を得て今回の完成に至った。この与えられた環境に感謝すると共に、今後の開発も意欲的に行っていきたいと思う。
関連ページ