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開発秘話

Vol.1

ダブルインモールド開発秘話

世界初のカメラ付携帯電話を支えた陰の立役者的技術

携帯端末が進化するに連れ、表面裏面ともに同時加飾できる技術が求められるようになっていた。
片面加飾のシングルインモールドが当たり前の時代に、両面加飾ができる技術、ダブルインモールドを生み出した経緯とは?
液晶画面を鮮明に見せる技術を
携帯電話が普及し始めた頃のことを覚えているだろうか?
今のようにさまざまな機能がついてはおらず、画面は小さく、モノクロが当たり前だったということを。
しかし時代とともに機種は年々グレードアップ。画面が大きくなって見やすくなり、モノクロからカラーになり、カメラ機能まで付くようになった。
こうした流れの中で、携帯電話の外観部分も大きく変わらざるを得なくなった。単に電話を掛ける道具としてではなく、画面を見てメールを読んだり、インターネットを閲覧したり、写真を見たりする情報端末へと変わっていったのだ。
結果、液晶画面をいかにきれいに鮮明に見せるかが重要な課題となった。
30年前の技術がヒントに
携帯電話メーカーから吉田テクノワークスに、液晶画面を鮮明に見せる技術開発の話が舞い込んできた。 当初は既存の製品に、画面をきれいに見せるAR(反射防止)蒸着をつけるため、UVのデッピング処理を行った。しかし量産するとゴミなどが付着してしまい、歩留まりが10%しかない状況だった。
なんとか打開する方法はないか。そこで下山が考えたのが、表と裏の両面に同時に加飾するダブルインモールド工法だった。
「現在の工法とは違いますが、30年前くらいに、化粧品のコンパクトケースに使う天板用の試作開発品に両面プリントする技術を施したものがありました。これを参考に、この技術を応用・発展できないかと考えたのです」。
失敗続きで工場が水浸しになることも
プラスチック製品の表と裏の両面を同時に加飾することができるダブルインモールド。 この技術が実用化できれば、後加工のラッピングではなく、ARコートとUV膜を同時に蒸着させることで、ゴミ等が付着しにくく、鮮明な液晶画面ができるはずだ。
しかしシングルインモールドに比べて技術的に高いハードルがいくつもあった。特に、表のインモールド箔と裏のインモールド箔の間に、どうやって樹脂を流し込むのかが最大の難問だった。「何度も失敗してしまい、工場の床が水浸しになってしまったりもしました」と下山は当時を振り返る。うまく樹脂を流し込む方法はないか。試行錯誤の末にたどり着いたのが、裏面のインモールド箔に穴を開けて樹脂を流し込むこと。
これがうまく行き、ダブルインモールド工法が確立されたのだった。
世界初のカメラ付き携帯電話に採用
このダブルインモールド工法によって作られたのが、業界初となるカメラ付き携帯電話だ。撮影機能が付くため、画面はより鮮明に見せなければならない。ダブルインモールドならそれが可能になる。しかも工程数が少なくて済む。
2000年11月に発売された世界初のカメラ付き携帯電話は業界をあっと言わせ、瞬く間に他社メーカーも追随。今ではカメラ付きは当たり前になった。
画期的な商品の一部分に、吉田テクノワークスが生み出したダブルインモールド工法が使われている。
ダブルインモールドは今までにない多彩なデザインが可能になることから、今ではいろいろな製品に展開。インモールドのパイオニアがまた新たなインモールド伝説を築き上げたのだった。
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